バターフィールド(Herbert Butterfield, 1900-1979)はイギリスはケンブリッジの歴史学者でキリスト教史、歴史紛争史などを専門とする。要するに、近世のヨーロッパ思想・文化史を専らとしていたようだ。何れにせよ、歴史家であって科学者ではない。
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H・バターフィールド著、渡辺正雄訳、講談社学術文庫 |
原典第一版は1949、本書は1957第二版の邦訳。訳者、渡辺正雄は科学史を専攻する大家の一人で著作も多い。科学史に興味があれば一読しておくべき基本中の基本。
本書はT.S.クーンの「科学革命の構造」も直接影響を受けている古典中の古典で、クーンの分析した「パラダイムの変換」が「新しい思考の帽子をかぶる」こととして表現されている。従来の「列伝」を批判して新思想の浮上を当時のパラダイムの中に位置づけようと努力している。現代的な科学史・科学哲学はこの流れの中にあるといえよう。
本書の中で扱われているのは、ガリレオ、コペルニクス、ケプラー、ベーコン、デカルト、ニュートンらの名前が挙がる力学、天文学、そして生物学、化学。科学革命と呼ばれる現象において注目されることは、「科学者精神の内部に起こった変化」、「従来と同じ一連のデータを用いながら、しかもそれらに別の枠組みを当てはめて相互の関係を新しい体系に組み替えること」、「考え方までも変えざるを得なかったというような場合」、つまり、「思考習慣の性格を一変させること」であり、このような科学革命を思想・文化史のなかに位置づけることである。
それでも最近の科学史の取り扱いから見れば、かなり列伝風でもある。表面的な取り扱いで、やや浅薄のきらいもあるが、大学講義が元になったことを思えばむべなるかな、むしろ広範な視座を提供しているところに注目したい。
一連の科学史の流れからすれば、素朴な歴史記述に終始しているが、思想史、文化史の「流れ」のなかに科学史を位置づけ、その相互の働きを素描した点は、現在でも古びていない。現代のラジカルな新科学哲学の描写のウソを見破るためにも一読の価値あり。
Nov./15th/2002